契約書・覚書・合意書・念書…いろいろあるけれど
「契約書にサインしていないから、まだ契約はしていないですよね?」
「覚書だから、正式な契約書ほど重要じゃないですよね?」
お仕事をしていると、こんな疑問を持つことがあると思います。
結論からいうと、契約は契約書がなくても成立しますし、書類の重みはタイトルでは決まりません。
この記事では、そもそも契約とは何か、そして契約書・覚書・合意書・念書などの違いを、クリエイターのお仕事の例で整理してみます。
そもそも契約とは? 口約束でも成立するの?
契約とは、当事者同士の「申込み」と「承諾」が合致することです。
民法522条では、契約の内容を示して申し入れる「申込み」に相手が「承諾」したときに契約が成立し、法令に特別の定めがある場合を除いて、書面の作成などは必要ないとされています。
たとえば、
「こんな感じのイラストを3万円でお願いします」
「わかりました、お受けします」
というやり取りだけでも、契約は成立しえます。
メールやDM、チャットでのやり取りも同じです。
※保証契約のように、法律で書面(または電磁的記録)が必要とされている契約もあります。どんな契約でも口約束で大丈夫、というわけではない点は押さえておきましょう。
契約書は何のために作るの?
契約書は、契約を「成立させる」ためというより、成立した契約の中身をはっきりさせて、後から確認できるようにするために作るものです。
先ほどのイラストの例で、後からこんな話になったらどうでしょう。
- 修正は何回まで?
- 納期はいつ?
- 完成したイラストの著作権はどうなる?
- 自分のSNSやポートフォリオに実績として載せてもいい?
- 納品後に相手が加工してもいい?
口頭で話していたとしても、時間が経てばお互いの記憶は少しずつずれていきます。
契約書に「何を・いつまでに・いくらで・どんな条件で・トラブルのときはどうするか」を書いておけば、言った言わないの行き違いを防げます。
特に著作権の扱いは、クリエイターにとって揉めやすく、後から取り返しがつきにくいポイントです。
「契約書」「覚書」「合意書」「念書」は何が違う?
契約書やそれに似たいろいろな文書があって、いったいどれがなにを意味するのか、ちょっとわかりにくいですよね。
書類のタイトルだけで、法的な効力が決まるわけではありません。
大事なのは「何が書かれていて、誰と誰が何に合意したか」です。
一般的には、次のような使われ方をしています。
| 名称 | 一般的な使われ方 | 誰が作る・署名する |
|---|---|---|
| 契約書 | 取引の条件をまとめる | 当事者双方 |
| 覚書 | 既存の契約について、確認・補足・変更を記録する | 当事者双方 |
| 合意書 | 当事者間で合意した内容を確認する | 当事者双方 |
| 念書・誓約書 | 一方が相手に対して約束する内容を書いて差し入れる | 主に一方のみ |
| 利用規約 | 多くの利用者に共通するルールを、事業者があらかじめ用意する | 事業者側 |
ただし、これはあくまで一般的な使われ方です。
「覚書」というタイトルでも、中身が取引の条件そのものであれば、契約書と同じように当事者を拘束します。
ちなみに印紙税でも考え方は同じです。
国税庁は、名称にかかわらず、契約の成立や内容の変更を証明する文書は「契約書」として扱うという考え方を示しています。
「覚書だから収入印紙はいらない」とは限らないのです。
「覚書だから気軽にサイン」して大丈夫?
「正式な契約書ではなく、覚書なので」と言われると、なんとなく軽い書類のように感じるかもしれません。
でも、覚書の中に、
- 報酬を変更する
- 契約期間を延長する
- 著作権の扱いを変える
といった内容が書かれていれば、それは取引の条件を変える大事な約束です。
タイトルではなく、「この書類で、自分は何を約束することになるのか」という視点で確認しましょう。
まとめ:契約書は「名前」より「中身」を見る
契約は、契約書がなくても申込みと承諾で成立します。
契約書は、その中身をはっきりさせて、後から確認できるようにするためのものです。
そして、契約書・覚書・合意書・念書といったタイトルの違いより、書かれている中身のほうがずっと重要です。
相手から書類が届いたら、タイトルで判断せず、中身を一つずつ確認する。これで、あとから「そんなつもりじゃなかった」を防げます。
次回は、請求書に貼る「はんこの画像」をきっかけに、紙の契約と電子契約の違いを考えてみます。
参考
- e-Gov法令検索「民法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 国税庁「契約書の意義」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7117.htm
- 国税庁「契約内容を変更する文書」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7127.htm
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