AIと契約書②「どこをチェックすればいい?」

AIで作った契約書、どこをチェックすればいい?

前回は、AIを使えば契約書のたたき台を簡単に作れる一方で、

「AIが作った契約書」=「自分の取引に合った契約書」ではない

というお話をしました。

では、実際にAIで契約書を作ったとき、どこを確認すればいいのでしょうか。

今回は、私ならまず確認したいポイントを整理してみます。

① そもそも、実際の取引内容と合っていますか?

まず確認したいのは、ここです。

契約書に書かれている内容と、実際にやろうとしている仕事が一致しているでしょうか。

たとえば、イラスト制作を依頼するとします。

契約書には、

「イラストを制作し、納品する」

と書いてある。

一見、問題なさそうです。

でも、実際には、

「SNS用の画像として使う」

「広告にも使いたい」

「あとから色や構図を変更するかもしれない」

「実績として作者が公開することもある」

といった話があるかもしれません。

契約書に書かれていることと、実際に話していることが違っていれば、後になって「そこまで聞いていない」という問題になる可能性があります。

AIが作った契約書を見るときには、

「この文章は正しいか?」だけではなく、「私たちが実際にする約束になっているか?」

という視点で確認しましょう。


② 相手との関係性に合っていますか?

契約書は、相手との関係性によっても変わります。

たとえば、

  • 初めて仕事をする相手
  • 何度も取引している相手
  • 個人のお客様
  • 企業
  • 下請けとして仕事を受ける場合
  • 自分が誰かに仕事を依頼する場合

では、必要な内容も違ってきます。

『自分が不利にならないように』とAIに指示するだけでは、この関係性までは十分に反映されないことがあります。

たとえば、継続的に仕事をしている相手との契約なのに、非常に厳しい解除条件を設定していたらどうでしょう。

反対に、初めて取引する相手なのに、重要な事項がほとんど決められていなければ、それも不安です。

「この相手と、この仕事をするための契約として自然か?」

という視点で見てみましょう。


③ 「自分に有利」だけを目指していませんか?

これは前回のコラムでもお話ししましたが、契約書を作るとき、

『自分が絶対に損をしない契約書にして』

とAIに指示したくなる気持ちは、よくわかります。

でも、契約は相手との合意によって成立するものです。

自分を守ることはもちろん大切ですが、相手に過度な負担を負わせる内容になっていないかも確認したいところです。

たとえば、

  • 解除できるのは自分だけ
  • 損害賠償の責任は相手だけが負う
  • 自分は何度でも修正を指示できる
  • 相手には非常に重い義務がある

といった内容になっていないでしょうか。

「自分を守る」と「相手に一方的な負担を押しつける」は、同じではありません。

実際の取引関係に照らして、バランスが取れているかを考える必要があります。


④ 必要なことが抜けていませんか?

AIが作った契約書を見るとき、「書いてあること」だけを確認してしまいがちです。

でも、

「書かれていないこと」

にも注意が必要です。

たとえばクリエイターの仕事なら、

  • 納品物は何か
  • 納期はいつか
  • 修正は何回までか
  • 報酬はいくらか
  • 支払時期はいつか
  • 著作権などの権利をどうするか
  • 実績として公開できるか
  • 素材を誰が用意するのか

など、決めておきたいことがあります。

もちろん、すべての契約書に同じ項目が必要というわけではありません。

ここでも、

「ケースバイケース」

です。

……どうしてもこの言葉を使いたくなってしまいます。

「そこを知りたいんだけど!」という声が聞こえてきそうですが、契約書は取引内容によって必要なことが変わります。

大切なのは、一般的な契約書の項目を全部入れることではなく、自分の取引に必要なことが決まっているかです。

2024年11月に施行されたフリーランス法では、フリーランスに仕事を依頼する側に、業務内容・報酬額・支払期日などの取引条件を明示することが義務づけられました。依頼する側・受ける側のどちらの場合も、確認しておくと安心です。


⑤ 条文同士が矛盾していませんか?

もう一つ、見落としやすいのが、契約書全体の整合性です。

一つひとつの条文を見ると問題がなさそうでも、複数の条文を組み合わせると、

「あれ?これ、前に書いてあることと矛盾していない?」

ということがあります。

たとえば、

「著作権は納品時に移転する」

と書いている一方で、

「著作権は報酬の支払い完了時に移転する」

と書いている。

これは人間が書いていても起こりうるミスなのですが、AIに部分的な修正を何度もお願いしていると、ほかの条文との整合性が崩れやすくなります。

そのため、最後は必ず契約書全体を通して読むようにしてください。


⑥ 「この条項は何のため?」と考えてみる

契約書を読むとき、難しい法律用語が並んでいると、それだけで「ちゃんとした契約書」に見えてしまいます。

でも、条文がたくさんあることと、自分に必要な契約書であることは別の話です。

一つひとつの条項について、

「これは何のために入っているんだろう?」

と考えてみましょう。

「損害賠償について書いてある」
「契約を終了するときのことを書いてある」
「著作物の利用について決めている」

など、その条項が何を決めているのかを自分の言葉で説明できると、契約書全体も見えやすくなります。


AIは「答えを出す道具」ではなく「考えるための道具」として使う

ここまで読んで、

「結局、AIで作った契約書は全部専門家に見てもらわないといけないの?」

と思われるかもしれません。

必ずしもそうとは限りません。

AIが作った文章を「完成品」として扱わずに、

たたき台を作ってもらう。
必要な項目を洗い出してもらう。
わからない言葉を説明してもらう。
自分の考えを整理する。

こんなふうに使うなら、とても便利な道具です。

そのうえで、

「この契約書は、自分の仕事に本当に合っているのか?」

という最後の確認をするとよいですね。


「AIで作ったけれど、ここがよくわからない」でも大丈夫です

AIを使えば、契約書を作ること自体は以前よりずっと簡単になりました。

でも、簡単になったからこそ、

「文章はできたけれど、これで本当に大丈夫なのかな?」

というところで迷うこともあると思います。

そんなときは、契約書そのものだけでなく、

「どんな仕事をするのか」
「誰と契約するのか」
「何を決めておきたいのか」

というところから、一緒に整理していくことができます。

最初から「契約書をチェックしてください」と依頼内容が決まっていなくても大丈夫です。

「AIで作ってみたけれど、何を確認したらいいのかわからない」

「相手から契約書を渡されたけれど、自分の場合はどう考えればいい?」

そんなところからでも、お気軽にご相談ください。

「これ、大丈夫?」を、一緒に整理します。


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