ネットショップやハンドメイドの販売ページを作っているとき、こんなふうに考えたことはありませんか。
「トラブルになるのが怖いから、とりあえず『返品・返金には一切応じません』と書いておこう」 「ほかのショップもそう書いているし、大丈夫なはず」
その一文、書いたとおりにあなたを守ってくれるとは限りません。
2026年10月、ペット販売の契約書にあった責任を逃れる条項について、使用を差し止める判決が消費者庁から公表されました。この記事では、その判決をきっかけに、物販の「返品不可」には2種類あることと、規約を見直すときのポイントをお伝えします。
ペット販売の契約条項をめぐる判決、何があった?
ペット販売会社の契約書の条項について、裁判所が一審・控訴審ともに使用の差止めを認めました。
訴えたのは、「適格消費者団体」の消費者支援かながわです。適格消費者団体とは、消費者に代わって、事業者に不当な契約条項を使わないよう求めることができる団体です。
問題とされたのは、犬や猫の売買契約書にあった、販売店の損害賠償の責任を免除・制限したり、買った人の解除の権利を封じたりする条項です。団体は、消費者契約法により無効だと主張しました。
- 2025年12月3日 横浜地裁:団体の請求をすべて認める
- 2026年7月23日 東京高裁:会社側の控訴を棄却
- 2026年8月4日 会社側が上告受理申立て(コラム執筆時点で判決はまだ確定していません)
高裁は、犬や猫は一匹ごとに個性があり、ほかの子で代えられないものだとしました。そのうえで、通常備えるべき品質を欠いていれば、販売店は「契約不適合責任」を負うと判断しています。契約不適合責任とは、渡したものが契約の内容と合っていないときに売り手が負う責任のことです。買った人は、修理や交換、代金の減額、損害賠償、契約の解除を求められるとされています。
詳しくは、消費者庁の公表ページで確認できます。
ペットの話だから自分には関係ない、とは言い切れません。一点ものの作品やオーダー品を売る方にも、考え方の上で通じるところがあります。
「返品不可」には2種類ある?お客様都合と不良品の違い
物販の「返品不可」は、お客様都合の返品と、不良品・説明と違う商品の返品で、関わるルールが違います。
ひとつは、「イメージと違った」「やっぱりいらなくなった」というお客様都合の返品です。もうひとつは、割れていた、説明と色やサイズが違う、といった不良品の場合です。
| お客様都合の返品 | 不良品・説明と違う商品 | |
|---|---|---|
| 主に関わるルール | 特定商取引法(通信販売の返品特約) | 民法(契約不適合責任)、消費者契約法 |
| 「返品不可」と書いたとき | 広告にわかりやすく表示していれば、原則としてそのルールが優先される | 「一切応じない」と書いても、無効とされる可能性がある |
| 何も書かないとき | 商品を受け取ってから8日間は返品できる場合がある(返送の費用は原則として購入者の負担) | 民法の原則どおり、修理・交換や返金などを求められる |
通信販売にはクーリング・オフはありません。その代わりに、返品のルール(返品特約)を広告に表示することが求められています。表示がない場合の考え方は、消費者庁の特定商取引法ガイド(通信販売の事例)でも紹介されています。
つまり、「返品不可」と書けば守られるのは、主にお客様都合の側です。不良品などのお店側に責任がある場合までまとめて断る一文になっていないか、という視点で確認しましょう。
「一切応じません」が無効になりうるのはどんなとき?
不良品でも責任を一切負わない、解除も認めない、という条項は、消費者契約法で無効とされる可能性があります。
消費者契約法は、事業者と消費者(個人のお客様)の契約に適用される法律です。個人で活動している作家さんでも、継続して販売している場合は「事業者」にあたると考えられることが多く、無関係とは言い切れません。
消費者庁の消費者契約法の解説には、無効とされうる条項の例として、次のようなものが挙げられています。
- 「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない」
- 品質に問題があっても、賠償も交換も修理も一切しないとするもの
- 「契約後のキャンセル・返品、返金、交換は一切できません」(解除権についての解説より)
ここで注目したいのは、「一切」「いかなる理由があっても」という書き方です。不良品の場合まで含めて、お客様の救済の道をすべてふさいでしまうと、問題とされやすくなります。
一方で、同じ解説には、不良品のときの交換や修理を別に定めていれば、有効とされる例も載っています。「断ること」と「不良品のときにどう対応するか」を分けて書くことが、大事なポイントです。
なお、実際に無効になるかどうかは、条項の書き方や取引の状況によって変わります。個別のケースは専門家に確認してください。
ネットショップの返品ルール、どう書けば伝わる?
返品ルールは、お客様都合の場合と不良品の場合を分けて、目につく場所に書きましょう。
消費者庁の通信販売における返品特約の表示についてのガイドラインでは、返品の可否・条件・送料の負担を、広告や注文の最終確認画面でわかりやすく表示するよう示されています。お客様都合と不良品の区別がつかない書き方だと、お客様都合の返品だけを定めたものと解釈される、とも書かれています。
見直しのときは、次の点を確認してみてください。
- お客様都合の返品を受けるかどうか、受けるなら期限と送料の負担を書いている
- 不良品や説明と違う商品が届いたときの対応(連絡の期限、交換・修理・返金の順番など)を書いている
- 「一切」「いかなる場合も」で、不良品の場合までまとめて断っていない
- 手作りならではの風合い(色のゆらぎ、形の個体差など)を、不良品とは別に商品ページで説明している
- オーダー品や名入れ品など、お客様都合の返品を受けない商品は、その理由も添えている
- 商品ページと注文確認画面の両方で、返品ルールが目につくようになっている
ハンドメイドのマーケットプレイスで販売している場合は、そのサービスの利用規約もあわせて確認しましょう。
規約は「断るための文章」ではありません
返品ルールは、お客様との約束を前もって整えておくためのものです。
「不良品のときはこう対応します」と書いてあると、お客様は安心して注文できます。届いた商品に問題があったときも、書いた手順どおりに動けばよいので、作り手の気持ちも軽くなります。
「断る一文」を増やすより、「どう対応するか」を書き足す。そのほうが、結果としてショップも作品も守られます。
まとめ:規約の見直しは3ステップ
- 今の返品ルールを、お客様の立場で読み返す
- 「お客様都合」と「不良品」の2つに分けて書き直す
- 不良品のときの対応を書き足し、商品ページと注文画面で表示を確認する
今回の判決はまだ確定していませんが、「一切応じない」という条項が厳しく見られていることは伝わってきます。この機会に、ご自分のショップの規約も一度見直してみてください。
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